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lyrics

原作 シロシビンズ @shiroshibins

「コールドスリープで1000年ほど眠る
その頃 地球はもう無いから大丈夫」

永年睡眠施設のテスターに選ばれた俺は
少し長めの昼寝のつもりでいた

国の認可を得たという触れ込みだったが
今にしてみるとそれも怪しいものだった

記憶データにいくつかの欠損が見られた
当時の技術は まだ完璧じゃなかったらしい

自分が自分であるということすら忘れて
〝たった今 生まれてきた〟
という感覚が俺を包む

不安や後悔は記憶と共に失い、
覚えているのは
カプセルに入る直前のことくらい

ちょうど一年後に
ダイヤルを合わせたはずだったが
デジタル表示は1000年後を指していた

眠りにつく前と
ほぼ変わりのない施設

変わったことといえば
人がいないこと と窓の外

向こう側に見える星はどうやら地球だ

正確に言えば
過去に地球だったものだ

昼寝する感覚で
参加したのがいけなかった

眠りにつく
直前になって職員が言った

「記憶の一部を失う場合がございますが
その場合 当施設は一切その責任を負いません」

今となっては
それは むしろ好都合だ

これから全てを忘れて生きることになる



生きてきて
大切にしたかった記憶だとか
所謂アイデンティティと言われるものは

何ひとつ残っていない分
絶望感もなくまた慌てることもなく
状況を客観視していた

そんなに眠っていた
という 気もしないし
むしろ少し疲れたくらいだ

警報が鳴り響き
息苦しさに気が付いた
どうやら酸素が残り少ないらしい

高山病のような症状に
そろそろ慌てた方がいい気がして来たが

1000年も眠って
まだ眠りたいとも思う
何より今更というものだろう

あの星はいつ滅び
どうしてここに来たのか

連れて来たなら
せめて それくらいは教えてくれ

それか 後少し寝かせてくれ

次の1000年後まで
まだ眠りたいのだ



未だ鳴りやまない
警報に背中を押されて
ようやく投げやりに避難を始めた

天井からは
不格好に ケーブルが垂れ下がり
やけに物が散乱した通路を行く

その時 何かを踏んだ
一瞬、嫌な音と感触がした

〝それ〟とは決して
目を合わせずに進むことにした

合成された音声が
繰り返し流れてる

どの部屋にも指紋認証システムが
使用されているが
どうやら俺の指紋は認証できないようだ

幾つもの角を曲がり
ようやく見つけた非常口は
指紋認証ではなくドアノブ式だった

誰に向けてかも
わからない祈りを捧げ
できるだけ静かに
ゆっくりドアを開けた

いきなり強風が
吹き付け目を細めたが
襲ってくる風は
爽やかで心地良かった

大きな空洞が下まで
続いている…

思考する隙を与えずに
「ガチャリ」と音がした

プールの飛び込み台ほどの
足場の上で
ボーッと立ち尽くす

どれくらいの時間が経ったのか…
少なくとも30分くらいは
こうしていただろうか

そのうち心がザワザワとしはじめ
理性が音を立てて切れた後


俺は大きな空洞へ飛び込んでいた


すべてから解放されたような気分で

いつのまにか笑顔で

タイトルのわからない歌を歌って

どこまでも落ち続けた
どこまでも、落ち続けた

なんとなく死なない気がした

何の保証もないくせに

変に自信満々にそう思った

まだ地面は見えない

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